老化を加速させる老化細胞『ゾンビ細胞』をとことん知る

何をやっても老化を加速させる、ゾンビ細胞の存在を皆さんはご存知でしたでしょうか?

老化研究の世界でいま、注目を集めるキーワードがある。それは、「老化細胞」だ。老化細胞が老化を加速させ、様々な病気の発症に影響を与えていることが分かってきており、この細胞に着目した老化制御研究も盛り上がりをみせている。

老化細胞(ゾンビ細胞)の謎が分かった//日経BP Beyond Health

日経Beyond Healthの記事でも詳しく取り上げられてますが、だいぶ学術的で難しいのでリジェラボ!では、用語の解説などをしながら、とことんゾンビ細胞を理解できるようにしていきますね!

老化細胞『ゾンビ細胞』とは?

米国の科学ジャーナリストが、英科学誌の『ネイチャー』のコラムで、分解されずに体内に居座り、周りの細胞を同じように老化させていく老化細胞のことを「ゾンビ細胞」と表現したことから、世界中で有名になりました。

ゾンビ細胞を退治して若さを保つ//Natureダイジェスト

ゾンビ細胞と呼ばれる老化細胞は、様々な炎症性物質(炎症性サイトカインやフリーラジカル、活性酸素等)を多く放出して、他の細胞に炎症を起こして同じようなゾンビ細胞を増やしていきます。

細胞の老化は歳を重ねた人だけが起きるものではありません。細胞には分裂回数に限りがあり(ヘイフリック限界)分裂する度に老化をしていくものなのですが、ある一定の回数(人間の場合50回〜60回)の分裂をすると、細胞は寿命を迎えアポトーシスという自然死を起こし、分解されて体外に排泄されます。

ゾンビ細胞と呼ばれる老化細胞は、このアポトーシスをすることができずに分解されなかったもので、通常は免疫細胞であるマクロファージが弱らせて分解するようになっています。

しかし、年齢を重ねるとマクロファージが減少し機能の低下を起こすために、この老化細胞を除去することができずに、老化細胞がゾンビ化していくのです。

肌老化を加速させる「老化細胞の蓄積」のメカニズムを発見!//藤田医科大学

まずは老化関連キーワードで全体を確認

この1枚で老化関連キーワードがすべて見れる!というような画像を作ってみました。この画像は、今後老化に関するお話の時にはちょいちょい出てくると思います。

老化には二つの要因があります。

  • 細胞の減少
  • 細胞の機能低下

そして、これらによって私たちの身体の中でさまざまな老化現象や病気を発症していくことになります。

蓄積した老化(ゾンビ)細胞とSASP

ゾンビ細胞は、蓄積するとSASP(サスプ:細胞老化随伴分泌現象)という現象を引き起こします。これは何かというと、細胞に炎症を引き起こす様々な物質をめちゃくちゃたくさん放出するというお話です。

SASPが出す炎症性物質は、フリーラジカル、活性酸素、炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリックス分解酵素などなど。

それぞれを説明すると長くなるので、SASPによって何が起きるのかという結論をまとめちゃいます。

慢性炎症が老化と病気の原因

SASPが他の健康な細胞に危害を加えてゾンビ細胞を増やしていき、そして、コラーゲンなどの組織タンパク質を分解する酵素を出しまくって組織に炎症を起こします。

老化(ゾンビ)細胞ができる→蓄積する→SASP→老化(ゾンビ)細胞が増える→さらにSASP→慢性炎症

この最後の慢性炎症が、様々な疾患の要因となります。

慢性炎症を止めるには?

慢性炎症を起こす要因は、喫煙やアルコール、添加物等の身体に必要のない嗜好品などが有名ですが、それらは摂取しないことで避けることができます。

蓄積された脂肪も炎症性物質を出し続けるものですので、食事や運動を通じて、体脂肪を適度に保つ必要があります。

これらは生活習慣で除去できる問題ですが、ゾンビ細胞は現代の医学では除去することができません。

ゾンビ細胞を除去する唯一の方法がオートファジー

慢性炎症を引き起こすゾンビ細胞(老化細胞)を除去する方法として唯一存在すると言われているのが、細胞のオートファジー機能です。

オートファジー=Autophagyのautoはギリシャ語で「自己」、phagyはphage等と同類で「食べる」の意です。日本語でもその語源のまま、自食作用とか自己貪食などといわれますが、細胞が自己成分を分解する機能のことを示します。

現在はこのオートファジーを働かせることが、唯一のゾンビ細胞を除去する方法だと言われています。

『飢餓状態でオートファジーを活性化』ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅栄誉教授の研究

【オートファジー】命をつなぐ細胞のリサイクル機能//東工大ニュース

年間3,000本以上の研究論文が発表される生物学のテーマがある。

「自ら(Auto)」を「食べる(Phagy)」という意味を持つ「オートファジー(Autophagy)」だ。

パーキンソン病など神経変性疾患にも関係すると言われ、その研究は今、世界中で大きな注目を集めている。

という冒頭ではじまる大隈教授の特集記事ですが、数多くのオートファジーの研究の中でも、飢餓状態により活性化するという研究でノーベル賞を受賞されました。

前述の冒頭文のように、世界中でまだまだ研究が進んでいる分野ではありますが、ノーベル賞の受賞は確固たるものであることは確かです。

老化細胞や慢性炎症とオートファジーの研究には、多くの興味深い論文がありますので、今後論文解説の記事も書いていきますね!

以下は参考までに!

Clin Transl Med. 2017; 6: 24.

Published online 2017 Jul 26. doi: 10.1186/s40169-017-0154-5

PMCID: PMC5529308

PMID: 28748360

Autophagy and inflammation

Mol Cells. 2017 Sep 30; 40(9): 607–612.

Published online 2017 Sep 20. doi: 10.14348/molcells.2017.0151

PMCID: PMC5638768

PMID: 28927262

Autophagy Is Pro-Senescence When Seen in Close-Up, but Anti-Senescence in Long-Shot

まとめ

老化を加速させるゾンビ細胞を除去するのは、オートファジーを働かせること。そのためには飢餓状態を作ることが必要です。

飢餓状態をあえて作る「断食(ファスティング)」は一般的になりましたが、細胞を活性化することが必要なため、よくある「断食(ファスティング)」の方法、食べないだけでは、老化を止めて若返らせる効果を出すことができないことが分かっています。

下手したら、さらに老化しちゃうかも!?

ここについても今後詳しく解説しますね!

 

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